生活習慣病・内分泌教室

糖尿病はどんな病気?

糖尿病治療の目標は、糖尿病患者が健常者と同じ生活の質的レベルを一生涯保つことにあります。この目標を台無しにするのが合併症です。糖尿病は遺伝的な体質により膵臓からのインスリンの分泌量が少なかったり、分泌が遅れたり、肥満や運動不足でインスリンの効きが悪くなることが原因です。

インスリンは糖分が細胞の中に入るのを助ける働きがあります。糖尿病では摂取した糖分が血液の中に溜まったまま、細胞の中へ入っていけません。血液の中の糖分(血糖値)はどんどん高くなり、これを薄めるために血管周囲の細胞の水分を血管内に取り込むため、脱水による口渇、多飲が出現し、細胞活動の低下による全身倦怠感や遂には昏睡状態に陥ります。

これらの症状が、血糖値の悪い時に皆さんが経験する高血糖による急性の合併症です。高血糖性昏睡は最近では、発熱がある時や手術前後の高カロリー輸液で起きる確率が高くなっています。発熱によりインスリンの効きが悪くなる上、食欲がなくなって低血糖を恐れる余り、経口薬やインスリン治療を自己判断で中止して高血糖状態に陥ります。いつもと違う状態になった時は、自己判断で対処せず早く受診しましょう。

また、手術を受ける時は主治医に「自分は糖尿病です!」とはっきり告げるようにしましょう。不慮の事故による手術に対処するため糖尿病患者カードを常に携帯するようにしましょう。

低血糖発作については症状(冷汗、動悸など)をよく覚えておき、起きれば直ぐ対処できるように砂糖やブドウ糖を常に持っておきましょう。

本当に怖い糖尿病の合併症

一方、慢性の合併症は、体中の細胞にエネルギーとしての糖分が入っていかず、常にエネルギー不足の状態が続くため細胞が弱って行くことや、高血糖のため細胞を構成するタンパク質にブドウ糖が付着し機能障害をきたすことにより起こります。

細胞は全ての臓器の構成単位であるため、慢性合併症は全身に起こってきます。糖尿病はしばしば脂質異常症(高脂血症)を伴うため、動脈硬化による脳梗塞、心筋梗塞(糖尿病患者では神経障害のため無痛性の場合あり)がしばしば合併します。これらは直接生命にかかわるので、心電図などの定期的な検査と症状が出た時の早急な受診が必要です。

糖尿病性網膜症や網膜剥離による失明は生活のレベルを著しく低下させます。定期的に眼科を受診しましょう。

自律神経が障害されると立ちくらみ、尿失禁、下痢と便秘が交互に続く胃腸症や胆石が発症し易くなります。腎症は腎臓内の細かい血管などが障害され体に必要なタンパク質が尿に漏れたり、体内の老廃物が排泄されず、浮腫が出現し悪化すると尿毒症となり命にかかわるため人工透析が必要となります。細菌を殺す働きを持つ血液中の白血球も糖尿病患者では機能が障害されているため感染症(肺炎、結核、膀胱炎など)が起き易くなります。

足は心臓から最も遠く、糖尿病による動脈硬化や末梢循環障害のため、しびれや痛みを感じるようになり、壊疽や足底潰瘍が出来易く足切断の確率は糖尿病がない人の20~ 30倍と言われています。神経障害があるため傷があっても痛みを感じないので、手遅れになることがあります。常に足の状態やアンカなどの使用には十分気をつけてください。

このように慢性の合併症は油断するとじわじわ皆さんを苦しめていきます。これを防ぐのは常に良好な血糖コントロールを保つことに尽きます.糖尿病は皆さん自身の努力が報われる病気であると同時に不摂生により悪化する自業自得の病気です。

皆さん自身のやる気と日々の努力が有って初めて、我々医師や看護師のサポートが生きてきます。糖尿病の治療は患者の皆さんと医療者との共同作業です。皆さんどうか頑張ってください。私たちは心から応援いたします。


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